The Country of the Working Class
電話だと相手の態度が変わってしまう
1999年、アパートの引っ越しをしたときのことです。夫は仕事や引越しの手続きに追われて忙しかったので、何か私も役に立てることはないかとずっと考えていたところ、彼が駐車場を探していたのを思い出しました。
アパートの契約に関しては何ひとつ役に立てなかったので、私はさっそく越したてのアパートのまわりを散策し、いくつかの駐車場の看板を見つけました。家に帰って、メモったばかりの連絡先に電話で問い合わせてみると、空きがあるとの返事が返ってきました。
ところが、具体的な話を進めていくうちに、しだいに相手の様子が変わっていきました。たぶん、私の話す日本語がどこかヘンだと感じたのでしょう。明らかに、その人の話し方が変化しました。そして、ついに私が外人だと分かると「やっぱり空いてるところはないね」と、あまりにも冷たく、電話を切られてしまいました。
私はあまりのショックに、もう次の連絡先へ電話をかける気力は残っていませんでした。
フィットネスクラブの会員になるのにも、電話では同じ苦労をしました。2、3回断られた後、ようやく誰の助けも借りずに、一人前の大人扱いをしてくれるところを見つけました。
そこで先ほどの質問の答えに戻るのです。本当の私はこんなふうに感じています。
「日本が大好きだし、素晴らしいと思うから7年も住んでいるんです。でも、つらいことや、苦言を呈したいこともたくさんありますよ」と。
でも、考えてみればこれと同じ話を、ロンドンに留学した日本人の学生に聞いたことがあります。彼女はきれいな英語を話すのですが、電話では、外国人だとわかると相手の態度が変わると言います。つまり、イギリス人も日本人と同じなのです。人種差別をする人はどこにもいるのです。
ともかく私は、日本に来てから、じつに数々のことに驚かされ、また感心させられてもきたのでした。