The Country of the Working Class
日本を知らずに日本に来た
あなたはマンチェスターManchesterという街の名前を耳にされたことがありますか?
イギリス北西部に位置する人口40万人ほどのこの街は、ロンドンから電車(BR、英国鉄道)で3時間ほどの距離です。ロンドンのある南イングランドに比べると、格段に物価が安く、街中は活気にあふれ、郊外は美しい自然に囲まれた街です。
マンチェスターというと日本のみなさんは18〜19世紀の産業革命the Industrial Revolution発祥の地として、また最近ではサッカーのマンチェスター・ユナイテッドManchester United FCで、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
私は生まれてから大学を卒業するまでの22年間を、このマンチェスターで過ごしました。マンチェスターは、私のホームタウン(故郷)です。
大学を卒業後、1994年の夏に日本に来るまで、私は日本のことをほとんど知りませんでした。
知っていたのは、スシ、ゲイシャ、キモノ、サムライ、スモウといったいくつかの単語くらい。
ここで誤解を避けるために補足しますと、私だけがとりわけ無知なイギリス人というわけではありません。かつて私の大学時代の友人たちも、日本が島国であることはもちろん、日本と中国が別の国であることを知っている人ですら少数でした。
大学生でさえそうなんですよ。
くり返しますが、これは私だけにかぎったことではなく、イギリス人全般の日本への認知度といっても差し支えないでしょう。
イギリスの義務教育では、アジアについてはほとんど何も教えません。歴史や地理の授業にさえも、日本はほとんど登場しないのです。
だから、私がかろうじて知っていたのは、日本が東の果てにあるということだけ。それは日本のニックネームが“Far East”だったからです。