The Country of the Working Class
イギリス人は働かない?
1970年代後半から80年代後半までの、マーガレット・サッチャーの時代は、ワーキングクラスにとってはまさしく受難の時代でした。
彼女はこちこちのトゥリーTory(保守主義者)でした。彼女は、ワーキングクラスの人々の「未来を切り開く力」を信じなかったのです。
イギリス人の大多数はワーキングクラスなのに、「イギリスの景気のため」と言いながら、彼女は炭鉱や製鋼所をどんどん閉じました。こうして、労働者の働く場所はどんどんなくなり、結局はミッドルとアッパークラスの人々だけがトクをしたのでした。
第二次世界大戦が終わってわずか2年後、当時の労働党首相クレメント・アトーリーによってつくられた福祉国家welfare state「揺りかごから墓場まで」は、がたがたになったのです。社会保障費や教育に費やす国家予算は大幅に削減され、失業者数の割合も20パーセントを越えました。
よくイギリス人は働かないと言われますが、それは働いても賃金は増えず、誰からも感謝されないからです。
もっとも、サッチャーが登場するまで、イギリス人は福祉に甘え、若者たちは髪をのばしてポップミュージックに熱狂し、失業保険をもらって生きていたのですから、自業自得かもしれません。
イギリスの映画『フルモンティー』(1997年)、『ブラス』(1996年)を観たことがありますか?
どちらも、不況にあえぐ失業者たちが、何とか生計を立てるために仕事にありつこうと、七転八倒する作品です。コメディータッチで描かれているのですが、なかなか現実的です。私はこれらの映画を日本の映画館で日本人の友人と観ました。その友人はただ笑っていただけなのに対し、私は過去の記憶がよみがえり、涙と笑いで顔がくしゃくしゃになったのを覚えています。興味のある方はどうぞ観てください。