質素でシンプルなライフスタイルの原因? いまも残る階級制度
もちろん、近代国家のイギリスに「制度としての階級」がいまも残っているわけではない。しかし、ほとんどの人が、自分の出身階級を話すし、意識しているのは事実だ。だから、スノッブ(俗物)というのは、軽蔑の意味を持つ。つまり、下の階級から見た「鼻持ちならない成金趣味」の人間を言う。
歴史を振り返ると、18世紀ごろまでは、「イギリスには2つの国民がいる」と言われていた。王室・貴族と、それ以外の民(いわゆるピープルpeople)。しかし、18世紀に産業革命が起こると、その担い手となった商人や資本家や専門技術者などの市民(シチズンcitizen)と呼ばれる人々が台頭し、「3つの階級」が形成された。 「3つの階級」とは、土地所有者である上流階級と、中流階級、労働者階級である。
(1)上流階級 upper class(人口の2~3パーセント)
上流階級は王室、貴族とジェントリgentryで構成されている。ジェントリというのは、一般的に爵位を持たない土地所有者のこと。これらの人々は、城や大邸宅に住み、ほとんど働かずに、土地からの収入などで裕福な生活を送っている。 つまり、これらの人たちにとって、人生のすべての時間はヒマつぶしである。働く必要がないので、国会議員や知事、判事などになる人も多い。 また、レジャー・クラスとも呼ばれ、お金に糸目をつけない狩猟、海外旅行、テニス、ゴルフ、競馬、ヨットなどに興じて一生を過ごす。
(2)中流階級 middle class(人口の約15~20パーセント)
産業革命によって台頭したブルジョアジーと専門職の人々がこのクラス。 ブルジョアジーとは、産業資本家や銀行家のことで、企業を経営するか、あるいは投資で利潤を得ている。 専門職とは、弁護士、医師、教会関係、芸術、将校、土木技師、機械技師、建築家、会計士などで、労働者ではあるが、肉体労働によるものではないということで、労働者階級とは区別し、一般的にWhite Collar workersと呼ばれる。しかし、長らく続いた「イギリス病」とサッチャー改革で、多くの中流階級が没落した。
(3)労働者階級 working class(残りのすべての人々)
毎日の労働によって生活の糧を得ている階層。Blue Collar Workersとも呼ばれる。この人々は、働かずには食べていけないし、何をするにも懐具合を気にしなければならないので、節約の精神が染みついている。現代のイギリス人のほとんどがこの層だから、イギリスは節約大国と言える。
この人が Working Class ということはよく知られていますね このように階級社会が残るイギリスでは、階級によって言葉や仕草まで違う。 上流階級の使う英語は、あのクイーンズイングリッシュ。中流階級の英語は、BBC放送で主としてアナウンサーが使っているもの。ただし、一般放送では地方の訛りも取り入れている。労働者階級の英語は、ロンドンの下町コックニーの言葉(映画『マイフィアレディ』で、あのイライザが喋っていた言葉)が代表的。もちろん、それぞれの地方の方言やアクセントで話されるものもある。
また、大学まで行くのは、上流と中流の上層の子弟が圧倒的に多く、労働者階級の子供は中等教育を終えると、すぐに働きに出る傾向がある。
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