The Country of the Working Class
大学に進んでもっと語学の勉強をしたい!
私は物心がついたころから、言語・異文化というものに興味がありました。最初の記憶は、父が兵役で学んだドイツ語を幼かった私に聞かせてくれたことです。聞いたことのない言葉で、ふざけながら話しかけてくる父に、何と答えてよいのかわからなかったのにもかかわらず、とても新鮮な驚きと興味を覚えたことが、いまでも記憶に残っています。
ここでちょっとだけ日本とイギリスの義務教育システムの違いをご説明します。
イギリスでは、一般的に5~8歳はインファントスクール、8~11歳はジュニアスクール、そして11~16歳がシニアスクールと呼ばれ、ここまでが義務教育です。しかし、シニアスクールの最後にあるGCSE General Certificate of Secondary Education(全国共通中学校教育修了資格)という試験に合格しないと、ただ学校に通っただけでは義務教育の修了資格はもらえません。
話題を外国語にもどしますと、日本では中学生から英語の勉強を始めるように、イギリスの子どもたちは、11歳からフランス語を学びます。13歳になるとGCSEの試験に向けて選択教科が増えます。
私は語学に興味があったので、フランス語、ドイツ語とラテン語を学びました。勉強は人いちばい好きな私でしたが、16歳のときに家庭の事情からアパートでの一人暮らしを始めなくてはならなくなりました。このころ、何度もくじけそうになった自分を支えていたのは、「大学に進んでもっと語学の勉強をしたい!」という夢でした。また同時に、意地のようなものもあったと思います。
〈ワーキングクラスの者は大学には進学できない。万一、入学ができたとしても、卒業まではとうてい漕ぎ着けないに違いない〉という、前述のイギリスの一般的な考え方には反発を感じていたので、それがかえってバネになり、大学進学の意志がより強固なものになったと思います。