イギリス人の私が日本で暮らすようになって、もう十数年年になります。神奈川県相模原市のある女子高校で英語の教師をし、21世紀最初の年に、日本人の男性と結婚しました。
それ以前の私は、約1年間、日本の一流といわれる商社でOLをしていたこともあります。また、ある時期、日本のテレビ番組に出演していたこともあるので、あるいはみなさんご存知かもしれません。
では、そんな私がなぜ日本に来たのかというと、日本の文部省(現・文部科学省)のおかげです。JETプログラムといって、英語圏からネイティブ・スピーカーを招き、日本の小中学校で英語の教師をさせるという制度があり、私はこれに応募したのです。
1994年、大学を卒業した私は、生まれて初めてヨーロッパ以外の土地で暮らすことになりました。そして、日本についてはほとんど何も知らないまま、茨城県のある中学校で英語の先生になりました。
日本は、私の想像とはまったく違う国でした。正直言って、とまどいと驚きの連続でした。
イギリスで見慣れた世界地図では、日本は右の端にちょこんと載っているだけです。イギリスが真ん中に位置するこの地図では、左は大西洋をはさんでアメリカ、右はユーラシア大陸がずっと続いて、その先に消え入るように日本があるからです。
つまり、私たちの言葉、英語でいうファーイーストFar East(極東)に、日本はあります。だから、私は日本に来てしばらく、自分がファーイーストで生活していると思うと、落ち着きませんでした。生まれ故郷からはるか遠くに来てしまったという不思議な感覚が、ずっと体の中にありました。
でも、このファーイーストの島国は、素晴らしい国でした。私の国よりずっと清潔で、秩序正しく、はるかに高いテクノロジーの文化をもっていました。そして、物質的にもずっと豊かでした。これは誇張でも何でもありません。正直な私の感想です。