世界中で日本ほど豊かで、生活するのに便利な国は他にありません。しかし、それにはたったひとつの条件があります。それは、お金さえあればということです。
私は、階級社会class societyがいまも厳然として残るイギリスのワーキングクラス(労働者階級)working classの出身です。
ワーキングクラスを日本語ではうまく言えませんが、あえて言えば、庶民ということでしょうか。イギリス人のほとんどがワーキングクラスですから、私は自分の出身を卑下したことはありません。だから、正直に言いますが、ワーキングクラスとは貧乏人ということです。
しかし、日本のみなさんは、イギリス人のほとんどが貧乏人であるということを信じてはくれません。
産業革命the Industry Revolutionを起こし、7つの海を支配して世界に50以上の植民地coloniesをつくった大英帝国The British Empireの国民が、日本人よりずっと貧しい生活をおくっているなんて、夢にも思わないのです。
イギリス人といえば、みんな紳士淑女ladies and gentlemenで、ロンドンのハロッズHarrodsで買い物をし、アフターヌーン・ティーafternoon teaとガーデニングgardeningを楽しみ、男の人はロールズロイスRolls-Royceの車に乗ったり、バーバリBarbaryの洋服を着たりして、ウィットwitとユーモアhumorに富んでいると考えているのです。
日本人は、イギリスが1970年代に深刻な不況に陥り、「イギリス病」という病に冒されていたことはある程度知っています。でもそれは単なる知識ということで、まさかイギリス人が平均的な日本人より、物質的にはレベルの低い生活をしているとは、信じてはくれないのです。
これは、日本人がみんな、明治時代から西洋文化Western cultureに追いつけ追い越せでやってきたせいでしょう。だから、西洋文化といえば憧れるものであり、いまでもその気持ちをもって接してしまうので、本当のところが見えないのかもしれません。